2日目のカレーの秘密
2022.09.21
「カレーは作り立てよりも一晩寝かせた方が美味しい」・・・よく耳にするワードです
確かに作り立てより2日目の方がまろやかさが増し、場合によっては甘みが増すという説もあったりなかったり
では、この一晩の間には一体カレーに何が起きているのでしょうか?
カレーの成分の変化
とある研究のデータによると作り立てのカレーと24時間後のカレーの(煮汁)成分の変化として
「増えるもの」 ・粘度 ・水分 ・酸
「減るもの」 ・脂質 ・食塩 ・糖分 ・アミノ酸 ・香り成分 ・辛み成分
という結果が出ています
もちろん、レシピによってその増減幅は違いますが、意外な結果の成分変化もあるのではないでしょうか?
ここでまずいえることは
成分量の多少と味わいの感じ方は必ずしも一致しない
ということです
例えば、塩をそのまま舐めたとしましょう
同じ重量の塩で、粒子の細かい物と大きな粒のものを口に入れた時では感じ方が全く違います
細かい塩の方が一瞬で口の中で広がり溶けることによって非常にエッジの効いた塩味を感じますが、
大きな結晶の塩は口の中でゆっくり溶けてじわじわと広がる為、優しいまろやかな味わいに感じます
これはあらゆる成分において起こりえることで、成分的に同じ分量のレシピでも作る人によって仕上がりによって脂っこく感じたりさっぱり感じたり、 酸っぱく感じたり、まろやかに感じたと 違いを感じるのはこういった原因が一つとしてあります
さて増えるものとしては粘度・・・
これは具材(野菜や肉)から時間をかけて様々な成分が流出して混ざることにより粘度が上がります
水分も上がっていますが不純物(水以外)の成分の方がより多く流出することと、時間の経過とともに元の煮汁からわずかながら水分が蒸発することから濃度が上がり、粘度が増す・・・という流れです
また、酸は一時間と共に読んで字のごとく、まさに酸化が進むことによって起こります
逆に減るもの・・・
塩分や糖分、アミノ酸(うま味成分)や香り成分や辛み成分は、具材による吸い戻しと、揮発によって減少します
「甘味が増す」の秘密
さて、時間がたったカレーの煮汁からは成分的に減っているはず糖分が、食べると甘みが増したように感じることがあるのはなぜか・・・?
それは粘度が増したことよって口の中で甘味を感じる時間が長くなったからです
先ほどの塩の話とは逆の説明のようですが、「カレー」自体はお菓子のような甘さがあるものではありません
そもそも口に入れた瞬間に「甘さ」を感知する料理ではないので、口の中に長時間滞在することにより、まろやかな甘味を長く感知でき、「甘くなった」ように感じることがあるのです
「まろやかになる」秘密
では一晩立ったカレーから角が取れ、まろやかになったように感じるのはなぜでしょうか?
一つは煮汁と具材から流出と吸い戻しにより、全体の味わいの均一化が進むこと
そしてより大きな原因としてはやはり「粘度」と油滴の大きさにあります
カレーに入るスパイスの多くは油分に溶け込む性質があります
煮汁の中では辛さや香りの成分は水分より油の粒(油滴)の中に閉じ込められているのです
油滴に中に閉じ込めらた香り成分は粒が大きい方が口の中ではっきりと広がり強く感じますが、粒が小さいと感じにくくなる性質があります
そして油滴は濃度が高ければ高いほど、細かく小さく滞在します
わかりやすい大げさな例を出すと、ドレッシングはよく振ってもしばらくすると水分と油分に分離して油の粒同士が結合して大きくなりますが
濃度のあるマヨネーズは水分と油分が細かく混ざった状態を保ち、油滴が細かく小さい状態でキープされているのです
よって、つくりたてのカレーは油滴が大きくなりやすく香りをしっかり感じることができますが、一晩立ったカレーは粘度が増すため油滴のサイズが作り立てより小さく保たれるので香りを感じにくくなり、まろやかになったように感じるのです
まとめ
さて、一晩寝かせたカレーの秘密、ご理解いただけたでしょうか?
この話をぱっと読んで「だまされてたのか?作り立ての方が美味しそうじゃないか?」と感じる方のいるのではないでしょうか?
ですが、人間の好みは千差万別であること
また、冒頭で説明した通り「成分の変化」と「味覚としての感じ方」は一概に一致するとは限りません
また、レシピによっても成分も味わいも変化量が変わります
ジャガイモなどのデンプン汁やカレーのルーなど、より濃度が付きやすい具材を多くいれれば変化はより顕著に
逆にスープカレーのようなサラッとしたカレーであれば変化量は少なくなります
どこに正解があるものではないので、皆さんの味覚にある美味しい「カレー」をぜひ探求してみてください