知られざる羊の基礎知識
2023.03.28
牛肉、鶏肉、豚肉に比べ、どうしても日本ではあまり馴染みのない印象がある羊肉ですが、あらゆる宗教上の理由に引っかかることのない羊肉は、多くの国ではなくてはならない食材として親しまれています
羊といえば「ジンギスカン」・・・と何?となってしまう方が多いであろう羊について少しだけ学んでいきましょう
そもそも羊ってどんな動物?
羊といえば肉も勿論ですが、セーターなのに使われる羊毛も切っても切り離せない動物
また、モンゴルの遊牧民が使用する家屋(ゲル)にも羊毛で作ったフェルトが使われていることを考えると、まさに「衣食住」すべてに携わる、人間にとって非常に大切な動物であることがわかります
そんな羊は動物の分類上、ウシ科ヤギ亜科に属します。つまり、ヤギ(山羊)とはかなり近縁の関係にある動物で、牛とも分類学上は比較的近い関係にあります
ちなみに日本に関しては実のところ、もともと羊は生息しておらず、海外から持ち込まれた動物です
古くは推古天皇の時代に百済から羊2頭がラクダやロバとともに献上された記録が残っているそうですが、以後長い間、日本で羊が定着はすることはありませんでした
本格的に羊が日本で飼育されるようになったのは明治以降のことで、当時は羊毛生産を主な目的として飼育されていました
しかし、その後の羊毛の輸入自由化や羊肉の輸入自由化により、国内での羊の飼育は急減し、そのまま大きく回復することなく現在に至ります
羊の品種
そもそも、みなさんは「羊」というとどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか?
羊というと白くモコモコとした毛に覆われた動物というイメージを持つ方が多いかと思いますが、それは人間が羊毛を染色・加工しやすいよう品種改良した結果なので、もともと羊の毛が白かったわけではありません
一口に羊といっても、牛や豚と同じく様々な品種があります
一番耳なじみがあるのは羊毛でよく聞く「メリノ種」でしょうか? とはいえ、メリノ種も食用にも利用されて比較的「毛肉両用」の品種が多いようです
中でも食肉用としてよく聞くのがサフォーク種
イギリス南西部サフォーク州が原産の品種です。頭部と四肢に毛が生えておらず黒くなっていて「ひつじのショーン」のモデルになった羊の品種と言われています
サフォーク種は肉付きや肉質が良く食肉生産に優れているため、現在日本でも最も多く飼育されている品種となっています
その他、コリデール、サウスダウン、チェビオット、レスターなどがありますが、現状牛や豚などの家畜と比べると「食肉」として、品種による味わいの違いを楽しむほどの大きな食味の違いとその文化が根付いていないのが実情です
羊肉の種類
国によって分類の仕方もいろいろあるようですが、主だった羊肉の分類は「ラム」と「マトン」ではないでしょうか?
これの定義も国によって若干の差がありますが、日本においては 生後1年未満の羊の肉が「ラム」とされ、「マトン」は2歳以上の成羊の肉をさしています
これを聞くと「ん?1歳~2歳未満の羊はどこに行った?」と思われるかと思いますが、流通量が少ないもののこのレンジの羊肉は「ホゲット」という名称で流通しています
ただし羊肉の国内流通の約99パーセントを占める輸入品(オーストラリアとニュージーランド)に関しては輸入上の規約、呼称の関係上ホゲットの月齢の羊肉も「マトン」として輸入されることを考えると、「ホゲット」という名称に出会えることは非常に稀なことですね(偶然ですが当店では「ホゲット」を取り扱う機会も少なくないのですが)
ちなみにヨーロッパではさらにくわしく分けられており、若い順からホットハウス、スプリング、ラム、イヤリング、マトンの5種類に分類されているといいます
一般的にラムは柔らかく癖がなく、マトンは硬くて臭いというイメージを持たれていますが、古くの冷凍技術の流通上の問題から起きてしまった認識であり、現在ではマトン肉も羊としての特徴的な風味はラムよりはしっかりと存在するものの、「臭い」という肉の流通はほぼないと思っても間違いありません
あらゆる食肉動物に当てはまりますが、月齢が若いほど柔らかく風味も穏やかであり、逆に月齢が長いほど肉質がしっかりとして風味が豊かになります
好みと食べ方次第で選べるとよいですね
まとめ
目に付いたのが10年ほど前のデータではあるのですが、日本人が年間に食べる羊肉の量は一人当たり平均400グラムとのこと
牛肉は8kg、豚肉は15kg、鶏肉は11kgというデータに比べると非常に少ないことがわかります
ちなみにイギリスでは6.4㎏、羊大国オーストラリアでは17.5㎏だそうです
もっと積極的に羊を食べた方が良いという話ではないですが、「ハラール」という言葉も認知されてきた昨今
もっとバリエーション豊かに身近なお肉になるとより豊かな食生活を送れそうですね