玉ねぎの甘味とコクの秘密・・・
2021.11.29
さて、前回は玉ねぎの成分から効能についてのお話をしましたが、今回は玉ねぎのおいしさについてピックアップしてみましょう
玉ねぎの甘味
こちらは若干復習になりますが、玉ねぎは本来比較的糖度の高い野菜です
しかしながら「硫化アリル」(前回記事参照)という成分が非常に辛い為、生の状態だと甘味が絡みにマスキングされ「甘い」と感じることができません
しかし、この硫化アリルは熱に弱い為加熱することによって辛みが失われます 対して当分は熱による変化がないので、加熱により甘味は変わらず辛みが失われることによって玉ねぎの甘味を感じることができるようになるのです
裏を返せば、玉ねぎはいくら火を入れても数値的な糖が増えるわけではありません
辛みがなくなることにより「甘くなった」ように感じるだけ・・・
また「じっくり火を入れることによって玉ねぎは甘くなる」という話もよく耳にしますが、 こちらも実際のところは「甘味成分が増える」わけではなく、加熱により水分が蒸発することにより「全体量における糖分の割合が高くなる」ことによって、私たちの味覚の上でより甘味を感じているのです
ということは、「強火で炒めるより弱火でじっくりの方が玉ねぎの甘味をより引き出せる」のは火加減自体の問題ではなく弱火の方が加熱時間が長くなる分だけ、より多くの水分が蒸発しているのが原因であることを理解しておきましょう
ただし、同じ加熱でも玉ねぎを茹でた場合・・・ もちろん加熱により辛みは失われるので甘味を感じるようにはなりますが、 茹でることでは玉ねぎ内の水分は蒸発しないこと、また糖分は水溶性であることから玉ねぎ自体の甘味は焼いたりいためたりした時と比べると感じにくくなります
逆にスープや出汁に玉ねぎを入れて作ることによる美味しさの秘密はここにあります
飴色玉ねぎの秘密
さて、甘みのある玉ねぎといえばじっくり炒めた飴色玉ねぎです 皆さんも美味しいカレーを作ろうと飴色玉ねぎにチャレンジしたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
弱火でじっくりとソテーされた玉ねぎは水分が蒸発しもともとの玉ねぎの量の三分の一以下になるほどです それは当然甘くなりますよね(笑)
さて、この飴色玉ねぎ・・・料理において甘味を加えるにとどまらずコクを加えてくれる存在として活躍してくれます
では、生の玉ねぎにはそこまで感じらなかったコクはどこから来るのでしょうか?
その秘密は玉ねぎをを加熱することによっておこる2つの化学反応によって説明することができます
カラメル化反応
これはおそらくみなさんご存じで、いわゆる砂糖を焦がして作られるまさにその名のごとくの菓子「キャラメル」が筆頭
もっと素材的に純粋なのはべっこう飴でしょうか?
糖を加熱すると起こる反応で、糖が褐色(茶色に)に変化します
カラメル化した玉ねぎ内の糖は鍋底に張り付き、放置すれば焦げ付いてしまいますが、カラメル化物(糖)は水溶性ですので、水を加えれば(玉ねぎ内から出た水分)溶解して鍋から剝がれ、玉ねぎ自身が吸収して戻るのです
カラメル化によって生じた褐色は飴色玉ねぎの構成色の一つとなり、カラメル化した糖のほろ苦くも甘い香りは飴色玉ねぎのおいしさの秘密の一つとなっています
メイラード反応
加熱によって料理をおいしくする、という場面では必ずといっていいほど登場するのがこのメイラード反応です
これは、食物に含まれる糖とアミノ化合物が熱によって褐色に変化する反応です
お肉の焼き色などはカラメル反応ではなく、こちらのメイラード反応によって食欲をそそる茶色に変化するのです
メイラード反応は複雑でここで詳しく説明するときりがないのでまたいつかの機会にするとして(笑)
このメイラード反応によって生まれる香気成分こそが飴色玉ねぎのおいしさのもう一つの要素となっています
ただし、皆さんも一度や二度は経験があるでしょうが、これはやりすぎて失敗すると「焦げ」につながりますのでご注意を(正確に言うとカラメル反応やメイラード反応と焦げは別なのですが、ここでは気にせずOKです)
味わいの縁の下
「茶色いは美味しい」という言葉があるように(非公式w)、このようにもともとは無かったり、感じられなかった玉ねぎの甘味やうま味は「加熱」という現代では当たり前のなった技術により、あらゆる料理の味わいの土台を作ってくれる欠かせない存在となっています
オニオンサラダやオニオンリングフライなど主体的な主役にもなれば、あらゆる料理を下支えする縁の下の力持ち的役割としては筆頭に挙げられる玉ねぎ
飴色玉ねぎを簡単に作る方法や、玉ねぎを活かしたレシピはネット上にたくさんありますので是非検索しながら、おいしい食生活を支える玉ねぎを活かし、冷蔵庫中で干からびたり発芽させずに有効活用してください(笑)